分娩の廃止と今後の産科診療について
202510.15
この度、当院では4月に発生した医療事故を受けて分娩を休止し、産科診療機能の見直しを検討してきましたが、分娩を再開するための課題を全て解決することは困難であり、地域の分娩件数が減少傾向にあることを踏まえると、将来的にも安全に分娩を継続することは難しいと判断し、分娩機能を廃止することといたしました。
分娩の継続には、安全と質を確保することが最低条件です。そのためには、産科だけでなく麻酔科、小児科を含めた医師及び助産師の確保が必須ですが、現状では体制に見合った医師・助産師を確保できておらず、全国的な医師・助産師不足を踏まえると、今後も十分なスタッフを確保できる見込みが立ちません。また、全国各地で分娩件数がさらに減少することが見込まれる中で、当院においても分娩件数が100件を下回ることが想定され、スタッフのスキルの維持が難しくなるだけでなく、病院経営の視点からも厳しい状況が予測されます。
一方、地域における安全な分娩体制を確保するため、全国的にも分娩医療機関の集約化が進んでいます。松本地域の分娩医療機関全体で見れば、当院の分娩件数を吸収できるだけの受入余力があるほか、それぞれの施設は当院から自動車で30分から1時間の範囲内であることから、他施設への過度な分娩の集中や、遠距離出産といった妊婦さんの負担増加の問題は生じにくいと考えられます。
こうした状況を踏まえて検討した結果、分娩を廃止するという結論に至りました。将来的に当院での分娩を検討されていた方、特に近隣にお住いの方々にはご不便をおかけし、心苦しく感じておりますが、何卒ご理解いただけますよう、お願い申しあげます。
今後は、分娩機能を除く産科医療については継続いたします。近隣の分娩医療機関との強固な連携のもと、当院は「産科かかりつけ医」として、これまでどおり妊娠検査をはじめ、妊娠初期~中期の健診、産後ケア、相談支援等を担うことで、地域で出産を予定される妊婦の方々を支援してまいります。
当院は、患者様の安心と安全を第一とした病院づくりに職員一丸となって励んでまいりますので、ご理解とご支援を賜りますようお願い申しあげます。
松本市立病院
松本市病院事業管理者 北野 喜良
院長 佐藤 吉彦